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何年彼らは他校にいるんでしょう。。。
す、すみません。
果たせる役を探すために、その人の側にいたい。
「藤太さんは、強いんですね」
鈴には、藤太の明るい瞳の光が痛いくらいに強く感じられて、少し俯いた。
「強い・・・かなぁ」
「はい・・・、そう思えます」
あんな、阿高と別の女の子の姿を見てしまったら、鈴にはとても側にいられるとは思えなかった。
「諦めが悪いとは思うけど」
照れたのか、困ったような笑顔を見せて視線を逸らせ、藤太には珍しく語尾がくぐもった。
「鈴はさ」
呼ばれて、鈴は視線を逸らせたままの藤太を見上げた。
「笑ってあげれば、阿の字は満足だと思うよ」
視線を合わせた藤太の顔は、またニカッと音が聞こえそうな笑顔だった。
笑顔の力では藤太には到底敵いそうにないと思ったけれど、鈴の心は少し浮上したように感じられた。
「ありがとうございます。頑張ってみます」
ペコっと頭を下げて鈴は引き返す素振りを見せたので、藤太は呼び止めた。
「お、おい、阿高と話さないのか!?」
「心配かけちゃった人が、まだきっといると思うんで、謝ってきます」
藤太に元気付けられたと言っても、今は会えそうにないから、そんな言い訳をした。
まだ先ほどの子と一緒だったらと思うと、勇気が出ない。
「部長に謝らないと・・・・・・」
呟いて鈴は調理室へと向かった。
「痛っっっ」
突然正面に倒れこんできた人影は、悲鳴を上げた。
「え?」
「足、捻っちゃったみたいです」
「今ので?」
見下ろした視界に入った頭部と声、そして支えた体の小ささで女の子だと、阿高は判断した。
突っ込んできたところからしか阿高には認識できていないが、躓いた先に自分がいたようだと状況を整理した。
「歩けそうか?」
視界の頭部はフルフルと横に振られた。
「そうか。ねぇ、足捻ったようなんだけど、保健室に連れて行ってくれないか?」
阿高は側を通り過ぎようとしていた女子に、自分を掴んでいた正面の人物の手を預けて頼んだ。
「えっ、あの・・・」
頭部が困惑の声を挙げようとしていた。
「さっき、保健医いないみたいだったし、オレだと手当てできないから」
だから頼むな、と言って阿高は道場へ戻ろうとしたが、再び腕を掴まれた。
「女の子同士で運ぶなんて無理ですよ!」
捻ったというのは足だから当然かもしれないが、それ以外はかなり元気なようだ。
「じゃあ、俺が運んでやるよ」
声の方を見ると、真守がいつの間にやら追いついて来ていた。
鈴ではなく真守がいることに、阿高は苛立ちと落胆を覚えたが、次の言葉でそれらは驚きに変わった。
「兄さん!?」
真守の妹!?妹がいたのか。
「じゃ・・・よろしく」
いわれのない疲労を感じて阿高は道場へと立ち去っていった。
その背を見送りながら、綾音は不満の声を挙げた。
「兄さん、もっと空気読んでよ!」
「おまえ、“捻った足”に体重が掛かってるぞ」
冷静な一言を放った兄を、綾音は白い頬を膨らませて睨んだのだった。