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管理人の「徒然なるままに日暮し」な状態報告と創作公開場所とします。
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考えるより産んでみることにしました。(!?
いえ、ブログとオリジナル創作の話ですよ。
こちらの方が整理がうまく出来るかな・・・と思えたので。

諸先輩方が大勢いらっしゃるので、まずい点があればお教え下さい。m(_ _;)m
行き当たりばったりです。

以下、産み出しちゃったオリジナル創作です。
勢いだけで書いていますが、ご容赦いただければご覧下さい。

『龍の嫁取り』

 桃果(トウカ)―――、それは数百年に一度実ると言い伝えられる幻の果実。
 その果木が花開き、香気を嗅げばあらゆる災厄を防ぎ、果汁を啜れば寿命が延び、実を味わえば不老不死になるという。まさに栄華永久なる常世の実―――。


 泉が紅色に染まる凶兆に、村は恐れ慄き、何の策もないままに寄り集まった。 
 否、策は一つしかなかった。
 「やはり・・・」
 誰もが口にすることを躊躇いながら、しかし誰かが口にするのを待っていた。
 「なりません!!」
 おぞましい提案が挙げられる前に制したのは、村長の妻―梓(アズサ)だった。
 村を治める二柱のうちの片方が異を唱えたことでその場にいた村人は逆に勢いづいた。
 「しかし、これが運命なのです!覚悟していたはずだ!!」
 誰の声なのか確認する余裕などなくなるほどの怒りで梓は目の前が真っ暗になった。
 覚悟などなぞできようか。
 村など沈んでしまっても構わないほどに、私の幸せは別にあるものを。
 声が次々と火種になるかのように、今や内容も聞き取れぬほどに場は騒然としていた。
 「梓」
 見えぬ光を探すように呆然としていた梓に聞こえたのは、横にいる者の声だけ。
 「梓・・・すまない・・・」
 夫が決めたのなら、梓にはもう泣くより他にすることがなくなった。


 泉を見つめる人々の見開かれ、しかしすぐ逸らすことで魔を振り切ろうとする目は、燈歌(トウカ)を見る目と同じだった。
 鏡の奥で今朝見た泉と紛う色が二つじっと見つめ返す。
 鏡の世界の襖が微かな音を立てて開かれた。
 「村の家族を守るために、私たちは引き裂かれるの」
 静かに肩を震わせて部屋に入ってきた母は、そう言うと涙を流しながら燈歌の腕に縋りついた。
 筋張った細い手が驚くほどの力で掴み、指先が燈歌の柔らかい肉に食い込む。
 けれど燈歌は呻くこともしなかった。
 「とうとうその日が来てしまったのね・・・」
 そっと母の背を撫でて、燈歌は俯いてその暖かな匂いを確かめた。
 きっといつか懐かしむ日が来ることを確信して。
 「逃げなさい。燈歌」
 母は先ほどまでの打ちひしがれた表情をがらりと変え、毅然とした様子で言った。
 「あなたが犠牲になることはないのだから、逃げなさい」
 そしてそれを実行するべく、梓は家を出るに必要なものをかき集め始めた。
 「母様(カアサマ)、いいの」
 「あなたが行ったって、必ずしも村が前のようになるとは限らないのよ。何の契約もない。そうよ。ほとぼりが冷めるまで村を出ていればいいわ」
 まるで自分に言い聞かせるように、梓は娘を見ずに言う。
 「それでも、行かないよりはいいのでしょう?」
 燈歌の言葉に梓の手が止まった。
 絶望に捕らわれた顔で肩を落とす。
 「あなたを産んだのはこんなことのためじゃない」
 「うん」
 肉親だから判るほんの僅かな微笑を浮かべた娘。
 「“燈歌”と名付けたのだって、元気に幸せにって――」
 嗚咽が言葉を飲み込んだ。
 「今まで、ありがとう。幸せになって、母様」
 もう一度娘に縋った母を抱いて、母娘は一晩泣き続けた。


 「もうすぐ嫁が届くぞ」
 その声が聞こえないかのように、話しかけられた方は前方を見据えたままだった。
 「“桃果”を食えばおまえの病も癒えるだろう?」
 「その“桃果”も毒の生まれだ」
 漸く得た応えも冷ややかだ。
 「役に立てば上々。立たないなら引き裂いて、見せしめに浮かべてやればいい」
 陰惨な光が瞳に輝くのにも然したる反応をしない。
 視線だけを肩越しに投げる。
 「手が汚れるからいい」
 それだけ言うと、もう相手はしないという意志を空気で伝えてくる。
 「罰を与えるのも神たる龍の仕事のうちだと思うがな~彩季(サイキ)?」
 話しかけ続けたが、当の彩季が無視を決め込んでいるので、わざとらしいため息を残して、波流季(ハルキ)は立ち去った。
 残された静寂を、独り彩季は見つめていた。終末は近いのかもしれない。
 “桃果”を宿した器だとしても、毒の穢れを受け入れる気は毛頭ない。
 この土地はヒトごと沈めて再生の刻を待つのが良いのだ。
 ただ、己がその運命を共にせねばならぬのが、たまらなく口惜しい。
 今度こそ彩季は雑念を締め出すために、ゆっくりと瞼を閉じる。
 目的が叶わぬとしても、その姿からそうだと察する者はいないのだから。


 自分の白無垢姿を鏡に映すことすらしないで、燈歌は生家を出、輿に乗り、泉で小舟に乗り換えた。ここから先は独りきりの旅路だ。
 泉なのだから、大きいといえども果てはある。
 けれども家族との再会は叶わないのだろうと、見送る誰もが思った。
 これは輿入れの旅路であるとともに、常世への船出―すなわち死出の旅なのだから。
 燈歌が小さな頭を下げると、小舟はスッと水面に線を描いて進み出た。
 船頭もなく、紅の泉を渡ってゆく。
 自然と村人が両手を合わせて、頭を垂れる中、梓と村長の玄道は彼方に消える娘の頼りなく小さな陰をじっと見送り続けていた。
 それが痛いほど燈歌にも分かっていた。
 胸元に手を当ててその硬さを確かめることで、泣き叫び泳いででも戻りたい気持ちを堪えた。
 生まれながらの紅の瞳の為、村長の娘でありながら村人には敬遠され、友と呼べる人もなかった。
 「容姿の異なる子どもは神のもの」村に根付く因習のため石を投げられるようなことはなかったが、それでも陰でどんなふうに言われているかは知っていた。
 しかし、そんな村でも残りたい。
 厳しく見えるが慈悲に満ち、こんな娘をもってさえ村人の尊敬を集める父と、物腰が柔らかいながら、毅然と父とともに村を治めてきた優しい母の元へ。
 村が神に見放され始めたのは、燈歌が生まれる十数年前からだ。
 そもそも村長の家に子ができないことからも蔭りを感じていたようだ。
 16の歳に嫁いだ梓が身籠ったのは、27の頃。かなりの難産だったという。
 そうして産まれた待望の子は女児で赤眼。
 燈歌は産まれたときから村人に負い目を感じ続けた。
 そして山の土は痩せ、作物は思うように収穫がままならない。
 辺りに生息していた獣たちの姿も年々減っているように感じられる。
 そして、燈歌が16になった昨日、村が聖泉とそれ自体を神として崇めていた泉が染まった。
 全てが自分を虐げようとする神の仕業に思えてならない。
 もし、この先で神に逢うたら、私は―――。

 「花嫁、ここがこれからの貴方の住処となります」
 声を掛けられて、はっと燈歌の視界は開けた。
 どうも夢現でここまで来たらしい。
 自分の手をとっている人物にも今初めて注意が向いた。
 にこやかに笑んで立つ長身の若者。しかし纏う気配は人のものとは思えなかった。
 これが・・・神。
 燈歌はさっと、触れられていた手を引いた。
 それを見ても笑みを崩さずに横の人物は目を細くした。
 「怖がらせてしまったかな?申し訳ないけど、人の世との境は隠すしきたりでね」
 しばらく休むといいと言われて、燈歌は部屋に促されて扉は閉ざされた。
 まさか鍵をかけて閉じ込めてはいないだろうと思うが、確かめる気は湧かなかった。
 そうであったところでどうしようもなく、自由だとしても行き場などない。
 宛がわれた部屋は正方形に近い寝台と檜の箪笥など僅かな調度品、そして仕切り用の衝立しかなかった。
 光源がどこにあるのか定まらないが、部屋は水中にでもあるかのように光がほの青く揺らめいている。
 「泉の・・・下?」
 花嫁と呼ばれた。
 とすれば、先方もこちらを娶るつもりらしい。相手は先ほどのあの男か。
 土で汚れた白い着物の裾を握り、燈歌は唇を噛み締めた。
 一方、花嫁と別れた波流季は、気負いなく次は花婿となる彩季のもとへ向かっていた。
 ヒトと言えど、花嫁の容姿は上々に見えた。紅色の瞳はさぞや人界では異質だったろうが、華のようだ。暗い気質・表情に見えたのも、立場を思えば致し方ない。
 「彩季、そろそろ準備をしないと」
 襖の前で呼びかけた。
 「嫁さん、けっこう別嬪だったぞ」
 返事がない。
 それどころか気配すら感じられなかった。
 「あのやろう・・・」
 探すのも自分の役目、その手間を思って波流季は彩季を恨んだ。 



 以前に書き進めようと考えていたものに手を入れて流れが変わっています。
 7年前ほどから“蝕まれる龍”の話を書いていきたかったのですが、糖分が増えるかは未知数;
 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
 続きに堪えられそうな方はご連絡いただけると望外の喜びです。(勇気が出ます!!

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玖珂 鼎
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楽描き / ゲーム
自己紹介:
もそもそまったり生きながら、
目下目標は一日一画!(ムリ;
オリジナルも頑張りたい今日この頃。
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