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『勾玉学園』04の続きです。
バタバタと足音が近づいてくる。
鈴にはなぜかその音の主が思い浮かんだが、その普段とのイメージの差に首を傾げたくなる。
ドアが引き剥がされるような勢いで開かれる音がした。
「鈴!?」
声の主の姿は、青い仕切りでまだ見えないが、誰かは判った。
何度も自分を呼ぶ声は忙しなく、何度も息が切れている。
こんなに慌てて来てくれたんだ。
そう思うと、鈴は怪我をしたらしい額よりも、胸の方が熱くなるのを感じて、返事をするのが遅れてしまった。
そして鈴の感動とは裏腹に、無愛想な声が阿高に応じた。
「迷子じゃあるまいし、ギャーギャーうるさいぞ」
保健室(だと思うが)には鈴の他にも既にいたようだと、その声で判った。
誰?
その人が手当てをしたのだろうか。養護教諭にしては、ガーゼの具合から素人な手つきだったことが伺える。
「あんたが鈴をここに運んだのか…」
え!?私、運ばれた?
鈴は、急に恥ずかしくなった。気付けばここにいたのだから、当たり前の話だが、声の主は男性だ。しかも阿高が「あんた」と呼んでいることからも、教師ではなさそうだ。
「運んだし、手当ても済んだ。おまえができることなんて、もうないぞ」
「ここの先生は?」
「さあな、いなかった」
「鈴の怪我は?手当てが済んだってことは軽いのか?」
「ボールが当たった衝撃で転んで、頭を打って失神したんだ。怪我自体はあざとたんこぶ程度。」
そういえば…そうだっと鈴はグラウンドでお茶の準備をしていたことを振り返った。
隣のフィールドでサッカー部が練習していた。誤って飛んできたボールが肩に斜め後ろから当たったのだった。
その後の記憶はないが、先ほどの会話で成り行きは大方知れた。
肩もわずか痛むが、目立つ手当ては云わば自分のせいでできた怪我・・・そう考えて、鈴は顔がカッと熱くなるのを感じた。頬を両手で押さえた。
衝撃よりも驚きが勝って足の踏ん張りが利かなかったように思う。
さぞ周りも驚いたことだろう。
ここまでの経緯を想像すると、もう一度ベッドに突っ伏してしまいたくなる。仕切りのカーテンが開かれることがなければいいと願ってしまったが、そうもいかなかった。
足音が近づいてくる。
「まだ寝てるぞ」
声が制した。しかし音は途切れない。
おい、という声に重なってそっと遠慮がちにカーテンが揺れて、開かれた。
「・・・・・・」
阿高と鈴の視線がぶつかった。沈黙。
鈴は恥ずかしくて、でも俯くことさえ阿高の反応が怖くてできなかった。
阿高は驚いたように見開いていた目を、細め、やがて険しくさせた。
その切ないような表情に鈴はドキッとした。阿高が泣いてしまうんじゃないかと思えた。
「起きて大丈夫なのか?」
声をかけられたのに、数度頷くだけで、声がだせない。
「倒れたってだけ聞いたから、驚いた」
また頷く。
「ごめんね」とか、「来てくれてありがとう」とか言えば良さそうなものだが、全く言葉が口から出ず、首振り人形みたいだと、鈴は思う。
「目が覚めたのか?」
さらに開かれるカーテンの幅が広くなって、そこからトレーニングウェアのままの真守の姿が現れた。
「日下部先輩・・・」
グラウンドでは格好良くすら見えた真守だが、この空間では何故か不恰好な気がした。
消毒液の臭いが全く似合わない。
「あ、あのご迷惑をお掛けしました!」
慌てて鈴はベッドの上で頭を下げて礼を述べた。
これに少なからず、阿高がショックを受けたのを鈴は知らない。
「あまり頭を動かさないほうがいい。吐き気は?」
「ありません。大丈夫です」
さっきまで喉に何か詰まったかのように、言葉が出なかったのが嘘のようだった。むしろ早口で、鈴は真守に答えていた。
鈴を気遣う真守とそれに遠慮を見せる鈴の様子を眺めて、阿高は何も言わずにその場を去った。
それに驚いた鈴は、真守が止めるのも聞こえずに、阿高の後を追いかけた。
まだすっきりしません・・・すみません。
敢えて鈴視点でのみ書いてみました。
鈴にはなぜかその音の主が思い浮かんだが、その普段とのイメージの差に首を傾げたくなる。
ドアが引き剥がされるような勢いで開かれる音がした。
「鈴!?」
声の主の姿は、青い仕切りでまだ見えないが、誰かは判った。
何度も自分を呼ぶ声は忙しなく、何度も息が切れている。
こんなに慌てて来てくれたんだ。
そう思うと、鈴は怪我をしたらしい額よりも、胸の方が熱くなるのを感じて、返事をするのが遅れてしまった。
そして鈴の感動とは裏腹に、無愛想な声が阿高に応じた。
「迷子じゃあるまいし、ギャーギャーうるさいぞ」
保健室(だと思うが)には鈴の他にも既にいたようだと、その声で判った。
誰?
その人が手当てをしたのだろうか。養護教諭にしては、ガーゼの具合から素人な手つきだったことが伺える。
「あんたが鈴をここに運んだのか…」
え!?私、運ばれた?
鈴は、急に恥ずかしくなった。気付けばここにいたのだから、当たり前の話だが、声の主は男性だ。しかも阿高が「あんた」と呼んでいることからも、教師ではなさそうだ。
「運んだし、手当ても済んだ。おまえができることなんて、もうないぞ」
「ここの先生は?」
「さあな、いなかった」
「鈴の怪我は?手当てが済んだってことは軽いのか?」
「ボールが当たった衝撃で転んで、頭を打って失神したんだ。怪我自体はあざとたんこぶ程度。」
そういえば…そうだっと鈴はグラウンドでお茶の準備をしていたことを振り返った。
隣のフィールドでサッカー部が練習していた。誤って飛んできたボールが肩に斜め後ろから当たったのだった。
その後の記憶はないが、先ほどの会話で成り行きは大方知れた。
肩もわずか痛むが、目立つ手当ては云わば自分のせいでできた怪我・・・そう考えて、鈴は顔がカッと熱くなるのを感じた。頬を両手で押さえた。
衝撃よりも驚きが勝って足の踏ん張りが利かなかったように思う。
さぞ周りも驚いたことだろう。
ここまでの経緯を想像すると、もう一度ベッドに突っ伏してしまいたくなる。仕切りのカーテンが開かれることがなければいいと願ってしまったが、そうもいかなかった。
足音が近づいてくる。
「まだ寝てるぞ」
声が制した。しかし音は途切れない。
おい、という声に重なってそっと遠慮がちにカーテンが揺れて、開かれた。
「・・・・・・」
阿高と鈴の視線がぶつかった。沈黙。
鈴は恥ずかしくて、でも俯くことさえ阿高の反応が怖くてできなかった。
阿高は驚いたように見開いていた目を、細め、やがて険しくさせた。
その切ないような表情に鈴はドキッとした。阿高が泣いてしまうんじゃないかと思えた。
「起きて大丈夫なのか?」
声をかけられたのに、数度頷くだけで、声がだせない。
「倒れたってだけ聞いたから、驚いた」
また頷く。
「ごめんね」とか、「来てくれてありがとう」とか言えば良さそうなものだが、全く言葉が口から出ず、首振り人形みたいだと、鈴は思う。
「目が覚めたのか?」
さらに開かれるカーテンの幅が広くなって、そこからトレーニングウェアのままの真守の姿が現れた。
「日下部先輩・・・」
グラウンドでは格好良くすら見えた真守だが、この空間では何故か不恰好な気がした。
消毒液の臭いが全く似合わない。
「あ、あのご迷惑をお掛けしました!」
慌てて鈴はベッドの上で頭を下げて礼を述べた。
これに少なからず、阿高がショックを受けたのを鈴は知らない。
「あまり頭を動かさないほうがいい。吐き気は?」
「ありません。大丈夫です」
さっきまで喉に何か詰まったかのように、言葉が出なかったのが嘘のようだった。むしろ早口で、鈴は真守に答えていた。
鈴を気遣う真守とそれに遠慮を見せる鈴の様子を眺めて、阿高は何も言わずにその場を去った。
それに驚いた鈴は、真守が止めるのも聞こえずに、阿高の後を追いかけた。
まだすっきりしません・・・すみません。
敢えて鈴視点でのみ書いてみました。
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